はじめに
イーコマース事業協会(会員数220社)は、日本で最も歴史があり、日本最大級の“イーコマース(EC)事業者の商工団体”として活動している団体で、“イーコマースの経験・知識・情報を持った人が集まる場” を合言葉に、関西を中心に 日本全国からネットショップ関係者が定期的に集まって互いに学びあっています。
私はイーコマース事業協会会員で、広報委員会に所属の柘産業株式会社 畑中翔太と申します。
先日行われた「第172回定例会・情報交換会」の参加者の1人として、当日のレポートを報告致します。
9月14日13時からの各委員会開催の後、14時から「第172回定例会・情報交換会」が「新大阪丸ビル別館2-3号室」にて開催されました。
参加人数は会員:102名 ゲスト :19名。
第1講演では、ソックコウベ株式会社 EC事業部 副部長 玉山 順 様に、「MVP連続受賞!成長し続ける下着ブランド「aimerfeel(エメフィール)」の多店舗化戦略と売れ続ける仕組み」についてお話を頂きました。
第2講演では、once in株式会社 代表取締役 長坂 賢介 様に、「どん底から這い上がった 元料理人が見出した、飲食店流・仕込みEC運営」についてお話を頂きました。
ソックコウベ株式会社 EC事業部 副部長 玉山 順 様が登壇
ご講演タイトル 「 MVP連続受賞!成長し続ける下着ブランド「aimerfeel(エメフィール)」の多店舗化戦略と売れ続ける仕組み 」
■聴講者の声
玉山様には下着ブランド「aimerfeel」を展開する、ソックコウベ株式会社のEC事業戦略を余すところなくお話し頂き、また昨今の揺れ動くECマーケットや顧客志向を常に注視し、多店舗展開で年々売上・利益ともに倍増し続けている運営方法についてもご紹介頂きました。
市場環境が厳しい中、楽天市場のショップ・オブザイヤー6度目、5年連続受賞。その他YAHOO!ショッピング、au Wowma!でも連続受賞し続けている理由とは?
なぜ多店舗展開が重要なのか。
自社サイトと実店舗のオムニチャネル化に向けての取り組みや課題、今後を見据えた越境ECまで、「E」の戦略と「C」の対策視点で、成長しつづける仕組み作りやブランディングの構築を行い、成長に至った経緯などをご講演いただきました。
玉山様が運営する下着ブランド「aimerfeel(エメフィール)」では、国内ECサイト、実店舗のみならず海外へもECサイトや実店舗を多数展開されており、業績を伸ばし続けておられます。
急成長の裏側には玉山様の経験に基づく戦略、新しいことに果敢に様々なことに挑戦されていく姿勢が感じられました。
楽天ショップオブザイヤーを始めとした各モールの賞も受賞されています。
ただ、そんな好調な業績とは対照的に玉山様自身、昨今のEC業界を取り巻く悩みを感じておられます。
・配送問題
・プラットフォーマー対策
・大企業・メーカーのEC進出
・人材不足
・グローバル化
・原価高騰
・検索ゆらぎ
・SEO対策 など
こういった問題に立ち向かっていくには「仕組みとリスク分散」が必要とのことです。
まずは自社および自社商品をブランド化し、店名で検索されるところを目指す。
業務効率化を始めとして、ECにおける運営など誰がやっても同じ業務ができるというところまで情報や業務内容を社内共有し、可能な限り仕組化するように努めておられます。
リスク分散については1つの販路に依存した売上では今後どうなるか分からないとのことから、各ECサイトのシェアが均等になるよう運営をされています。
1モールのシェアが70%以上は危険とのこと。
お話しいただいた中でも特にブランド化(ブランディング)が大事ということでした。
売れ続けるには誰のナンバーワンになるか、誰にどういうベネフィットを与えるのかを確立しつつブランディングを行っていくことが重要と考えられています。
ブランディングには月一回の画像更新を始めとしたSNS,LINE、アプリなど全てにおいてKPI(企業目標の達成度を評価するための主要業績評価指標)を設定し、ブランドイメージ向上とファン固定化に取り組んでおられます。
また、サイト内コンテンツなどもテイスト毎に強化していき、商品企画も社員一丸となって決めていくなど、戦略に基づいた運営をされています。
商品企画は「あえてマーケティングしすぎず、ブランドコンセプトにそった商品」を提供することをお考えです。
玉山様が多店舗展開を進める理由に、安定した経営にはリスク分散が基本という考えをお持ちです。
その他にも楽天、自社サイトの注力ポイントやヒット商品の作り方についてお話しをいただきました。
個人的な感想ですが、私自身ショップを運営する中で、うまく戦略を立てられていなかったり、業務効率化をできていない部分があったりするので、今回のお話しを聞いて小さなことからでも改善をしていきたいと思いました。
once in株式会社 代表取締役 長坂 賢介 様が登壇
ご講演タイトル 「 どん底から這い上がった 元料理人が見出した、飲食店流・仕込みEC運営 」
■聴講者の声
幼い頃から身体にハンディキャップを抱え、数々の職業を経験した末にたどり着いたのが料理人という道。
そんな男がECを始めて苦難の連続。そして訪れたた"どん底" ...
絶対絶命のピンチから這い上がれた理由や方法とは? 陥りやすい穴とは? などなど、余すところなくお話しいただきました。
長坂様は、数々の仕事を経て、2004年25歳で10坪のイタリアンバールを独立開業、2014年からEC事業を開始。
100種類のパスタ・壺入りプリン・ギョーザ・もつ鍋等々、多種多様な商材の販売をされましたが、そこで味わった"天国と地獄"...
ようやくヒット商品に恵まれるも、なぜか?売れば売るほど赤字に...
いよいよ日々の運転資金が回らなくなるという絶対絶命のピンチに陥り...
藁をすがる思いで、中小機構、大阪府よろず支援拠点、大阪府産業振興機構などに相談...
そして、イーコマース事業協会(EBS)への入会。
様々な方々からのアドバイスや協力もあり、これまでの考え方や手法を大改革。
かつて自分自身が味わった「料理人の世界とECの世界のギャップによる失敗」を逆手にとって編み出した「料理人流のEC運営法」で少しずつ状況も回復...
今期は過去最高益を出されました。
講演ではまず、長坂様が幼少期から今に至るまでのストーリーについてお話し頂きました。
幼少期には、常人では考えられないような重いハンディキャップを抱えられていました。
けれども明るく、人生に絶望せず、恋をしたり、様々な仕事を経験したりととても人間味溢れる人物であることを窺えました。
また、飲食店でのお仕事の経験を活かすべくECサイトを立ち上げ起業されました。
長坂様の行っている飲食店流EC運営の原点はこの豊かな経験と壮絶な努力の基、身について行かれたのだと思います。
長坂様の会社では、企業理念の他に行動指針というものを示されています。
【行動指針】
会社は代表者やスタッフの所有物ではありません。
お客様、並びに社会のものであると私達は考えております。
お客様に必要とされ、世の中に貢献するために私たちは社会的責任を負っています。
あらゆる試練や困難に立ち向かい、不屈の精神で会社を成長させていくことが私達の使命です。
「食」を通じて温かな家庭の食卓に添えられる脇役のような存在を目指していきたいと思います。
この行動指針があることによってコンセプトが明確になり、スタッフと同じ方向に向かい一丸となって経営ができるとのことです。
長坂様が話される飲食店経営での良い点というものが
・売り上げは妥協しない
飲食店では目標の売り上げに達しない際、何としても達するよう閉店時間を遅らしたり、様々な施策を考え決して妥協せず結果を求めていく。
・仕入れには交渉をかける
飲食店では当たり前の仕入れの際の交渉を行うこと。(ディスカウントなど)
・トレンド情報は仕入れだ
情報をみずから得にいくという姿勢。気になるお店があれば全国どこでも行き情報を仕入れに行く。
です。
長坂様が飲食店流EC運営で重要だと話された点は
1.飲食店流=仕込みが全て
2.コンセプトを明確にする
3.管理会計を導入
仕込みについては、売り出す半年前からグーグルカレンダーなどを駆使し、計画的に商品開発、施策、企画を準備されています。
イベント当日、前日には何もすることがない状態を作るとのことです。
コンセプトについては、商品開発、ページの見せ方、テキスト、メルマガ、電話対応など「日本一の味・価格に厳しい大阪のオカン達が商品開発を担う随一の店」というコンセプトを一貫することによってスタッフのお客様対応のみならず、長坂様自身の運営をしていくにあたっての指針となるため、ブレることのないものになっています。
管理会計については、一時期、経営的に厳しい状況になっていたときがあったそうです。
しかしそんな時でもスタッフの方には一切そのことを告げず、管理会計についての本を読まれたり、EBSなどで色々なことを学ばれ、現在の業績まで成長させたとのことです。
イーコマース事業協会の吉村正裕理事長をモデレーターとした対談形式での講演
最後に、長坂様はスマホに競合他社などのショップをジャンル問わず多数ブックマークされており、いつでも確認できる状態にしているとのことです。
メルマガやセールのタイミングなどを常に知ることで自社に活かしているということをお話し頂きました。
私自身、現時点で長坂様からお話し頂いたことでできていないことが大変多いと痛感いたしました。
今回の講演内容を参考にし、今後のショップ運営に役立てていきたいと思います。
情報交換会 泳ぎイカ九州うまか新大阪店 参加者92名
定例会終了後は、情報交換会
定例会が終了した後は、泳ぎイカ九州うまか新大阪店にて情報交換会が行われました。
イーコマース事業協会は “業種・業態・地域・経験・年齢・立場” が異なる会員同士が、イーコマースという共通のテーマで対等の立場で学んで、会って、お互いに情報交換しながら自分のビジネス向上の気づきを得る場として情報交換会を行っています。
今回の情報交換会は92名(講師含む)名が参加し、お互いに知見を交換しあったり、相談しあったり、激励しあったりしていました。
次回は11月9日に開催です!
次回の第173回定例会も新大阪で開催予定です。
イーコマース事業協会の定例会についての詳細は、こちらをご覧ください ≫ https://www.ebs-net.or.jp/regular_meeting/
2019年9月18日 柘産業株式会社 畑中 翔太(広報委員会)