株式会社フューチャーショップ
稲生 達哉氏

2024年7月定例会にて「9割のEC事業者がまだ気づいていない、日本でライブコマースをやる本当の意味。実践した人だけが気づいていること&事例を公開。」と題して、株式会社フューチャーショップ 稲生 達哉氏に、今回はebsとして単独インタビューさせていただきました。
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講師: 株式会社フューチャーショップ 稲生 達哉氏

―中国ではライブコマースが盛んであるとよく聞きますが、今後日本でも同様に広がる可能性はありますでしょうか?あるとすればどのようなことが爆発的な普及に向かうターニングポイントになるとお考えでしょうか?
稲生 達哉氏:
“爆発的な普及”が起きるのは、やはりSNSのライブにショッピング機能が搭載された時であることが想像に難くありません。

すでに2023年には、YouTubeライブや動画にEC導線を貼ることができる「YouTubeショッピング」が登場し、2024年には連携可能なECカートが増加してきました。

しかし、YouTubeショッピングの利用条件が「YouTubeチャンネル登録者数が500人以上で、直近90日間にアップロードした有効な公開動画が3本以上、かつ直近12か月間の有効な公開動画の総再生時間が3,000時間以上」となっているため、利用できる事業者は限られています。

「TikTok Shop」は東南アジアにて展開が進んでいますが、日本ではまだ実装されていない状況。

Instagramライブと連携したライブコマース機能が導入される可能性も考えられます。

ただ、楽天市場やAmazon、Yahoo!ショッピング等のECモールが存在する状況下で、自社ECサイトも存在しているように、

ライブ配信に関しても、SNS上でライブを展開する一方で、自社ライブで展開するニーズも一定数あると考えており、「Live cottage」を展開しています。

* * *

中国のライブコマース事情を中国の方にヒアリングしましたが、その多くは、安売りの薄利多売で展開しています。

ECで買うより、店頭で買うより、ライブで買う方が安いので、ライブで買う流れが生まれている。

それが成立するのは、中国の14億人という人口があるためで、人口減少していく日本では、薄利多売型での展開はフィットしないでしょう。

日本でカギになるのは、「にぎわいづくり」です。ECサイトは実店舗と違い「にぎわい」が見えません。

にぎわいを可視化するために、「◯◯ランキング1位!」や「メディアで取り上げられました!SNSでバズってます!」と掲載しますが、これらはそういった実績が無い事業者では使えない手段です。

ライブ配信をすると、お客様からのコメントが入ります。

特に、既存のお客様から「すごくよかったです!また買います!」等のコメントをいただけることがあり、こういったレビューのようなコメントが入ることで「にぎわいが可視化されること」が、ライブ配信の大きな価値。

既存のお客様に楽しんでいただくことが、結果として、顧客維持率を高めることにつながったり、離脱客の再訪問につながります。

経営陣がこの価値に気づき、中長期的な効果をイメージできたときに、日本でのライブコマース活用は、中国とは違った形で進んでいくと考えています。
―ライブ配信は、しゃべりの流暢さや説明の分かりやすさといった、通常のショップ管理者と異なるスキルが必要とされるのではないかと思いますが、実際にどういった方が担当になっているケースが多いでしょうか?
稲生 達哉氏:
お客様と接する機会の多い販売スタッフの方や、経営者の方が出演されているケースが多いです。接客時によく聞かれる内容や、お客様の疑問点を把握しており、知りたい内容をイメージできる方が向いています。

良くないパターンとして、ライブ配信を”商品紹介をひたすらする場”と考えてしまい、必要以上に硬い雰囲気で配信をされてしまうケースもあります。

それでは見ている視聴者も、出演されている方も、楽しくありません。

ライブコマース施策がうまく展開できている方々にインタビューさせていただいて、共通して出てきたのは、どの方も「ライブが楽しい♪」という言葉。

ライブがうまくいっている方々は、スタッフ同士での会話や、経営者の方とスタッフの方々が談笑するような形で、何より自分たちが楽しんで会話をされています。

その雰囲気に、視聴者の方も惹きつけられ、”なんとなく、なにかしながら、見ている&聞いている”という状態があるようです。

 * * *

「しゃべりの流暢さや説明の分かりやすさといった、通常のショップ管理者と異なるスキルが必要とされるのではないか」とのことですが、

必要なのは、どう自分たちが楽しんで、視聴者の方にとっても居心地の良い場所をつくれるか?です。

このイメージを持つ上で、元HKT48でモテクリエイターとして自身で発信活動を続け、現在はライバー事務所321の代表を務めている「ゆうこす」さんが語る「あなたの知らないライバーの世界」の動画は、必見です。

下記の動画の「15:59〜」を見ていただくと、
https://youtu.be/ErTzW_kJpEY?si=RaY8FwGBUa39t4Sk&t=959

・「ライバー」は「YouTuber」とは違う
・人数は多くなくていい
・居場所をつくる、関係を深める

この3点が具体的にイメージできるはずです。

事業者の方々は、ご自身の商材に関しては詳しいはずですし、その周辺知識もお持ちのはずです。

ものすごくその分野に詳しい人が、解説付きで自分の推しを語っているライブだったら見たいと思いませんか?

ご自身の領域で「マツコの知らない世界」をやるような配信イメージで考えてみては、いかがでしょうか?

顔出ししたくない方もおられるかもしれませんが、事例に挙げさせていただいた古川紙工様は、デザイナーの方が「この魅力を伝えたい!」と顔出し無しで配信されています。
https://www.furukawashiko-online.shop/f/live-news

古川紙工様にインタビューさせていただいた記事もありますので、よろしければご確認ください。
https://www.future-shop.jp/magazine/interview-live-commerce-furukawa-shiko


―ライブ配信によって、既存客の維持を行うには、既存客から多くのコメントを集める「インナーバズ」が有効であるとのことですが、多くのコメントを引き出すテクニックでよい事例がありましたら教えてください。
稲生 達哉氏:
いちばんシンプルな方法は、「2択」を提示することです。

「Aがいいか?Bがいいか?どうですかね?」と問いかけたり、
出演者がA派とB派に分かれて、ディベートをするような形で

「私はAなんですが、みなさん、どう思いますか?」

と問いかけていくことで、視聴者の方が参加しやすくなり、コメントが入りやすくなります。

内容としては、アパレルであればコーディネート対決でもいいですし、他商材なら既存商品の「どっちが好きか?推し対決」でもいいですし、

新しい商品の企画案を見せながら、いっしょに商品をつくっていくような感覚を持っていただくのもいいかもしれません。
―Live cottageでは、コメントつきでアーカイブ動画として残すことができるとのことですが、アーカイブ動画を効果的に購買につなげるために有効なテクニックがありましたら教えてください。
稲生 達哉氏:
ライブ配信をしていると、良いコメントが入っている箇所や、自然体で感情も乗ってうまく説明できた箇所が出てくるかと思います。

「良いコメント=良いレビュー」と考えていただいて、ライブの一部を切り出して、該当する商品ページに埋め込むことが、最もCVアップにつながる2次活用施策です。

「ライブ配信のためだけ」にと考えて事前準備をすると、その労力や掛かる時間が気になってしまいますが、

「CVアップの動画コンテンツを生み出す」ことを意図すると、それなりのリソースを割く価値も見いだせますし、ライブを継続していくことで、「あ、ここ、使える!」と発見できる箇所も増えてくるかと思います。

そういったシーンを切り出したショート動画を作成して、YouTubeやInstagramのリール動画、TikTokに展開することも新規顧客獲得に有効です。
○講演タイトル
「9割のEC事業者がまだ気づいていない、日本でライブコマースをやる本当の意味。実践した人だけが気づいていること&事例を公開。」

○講師プロフィール
株式会社フューチャーショップ
新規事業企画室 サービスプロデューサー / ライブコマースディレクター
稲生 達哉氏

WEB制作会社でディレクターとしてキャリアを積んだ後、2012年にフューチャーショップにジョインしECの世界へ。「futureshop」ユーザー2900店舗のECサイト相談を毎日対応した経験を生かし、自社EC事業者のための講座「futureshop ACADEMY」を起ち上げ、企画および講師を担当。EC事業者からの個別相談や新規営業も経て、「今、必要とされていること」を感じ取りながら、ECサイト担当者のためのメディア「E-Commerce Magazine」の起ち上げと執筆、各種セミナーの企画運営を実施。コロナ禍には、オンラインセミナーの構築と運営を体系化した後、現在は新規事業企画室にてライブコマースのソリューション企画開発とライブ配信ノウハウの提供に従事。


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