ニイハチヨンサン
大月 茂樹様

2017年6月勉強会にて「改めて見直したい!Webサイトのマルチデバイス対応勉強会」と題してニイハチヨンサン 代表 大月 茂樹様にご講演頂きました。
勉強会の詳細はこちら


ニイハチヨンサン 代表 大月 茂樹様
―Webサイトの閲覧・利用に際して、ユーザ(お客さま)はデスクトップ(パソコン)とモバイル(スマートフォン)を使い分けしていると言われますが、これに関してはどうお考えですか?今後も使い分けがされていくと思われますか?
大月 茂樹氏:
よく言われているのは、「ユーザは、モバイルで調べものをして、デスクトップで行動する」ということですよね。ECであれば、「モバイルで商品選びをして、デスクトップで意思決定をして購入する」ということ。もちろん、すべてのお客さまがそうなのではなく、「モバイルの普及に伴って、そうしたユーザが増えてきた」「そうしたユーザが多い」ということです。そして、こうした買い物スタイルは、パソコンを所有していることが前提ですよね。当たり前ですけれど(笑)

ただ、デバイスとしての性能や機能の向上であるとか、アプリやサービスの充実であるとかがこれだけ進んできて、モバイルのみででもできることが増えてくると、わざわざデスクトップを所有する必要性ってなくなりますよね。職場では仕事で使うでしょうけれど、まさかネットショッピングの購入手続きのためだけにパソコンを買うような人はいないでしょう(笑)
パソコンにも耐用年数があり、買い替えのタイミングが来ます。そのタイミングが訪ずれたときに従来は何の躊躇もなく買い替えして来た人たちが、今後買い替えをしなくなる可能性ってとても高いですよ。なぜなら、もはやモバイルで何でもできちゃうからです。買い物はもちろん、Webサイトの閲覧もメールも、SNSもネットバンキングも、それこそ、写真やムービーの撮影も。元々使いこなせる人であれば、併用からモバイルのみへ…なんてこと、簡単にできますよね。
それと、元々モバイルしか所有していないデジタルネイティブな若い世代が、みなさんにとっての顧客層の中で占める割合が高くなって来るでしょうし、既になっていますよね。

そうした事情を踏まえてみれば、「商品選びから購入手続きまで、すべてをモバイルで完結する」というユーザの割合が今後は多くなるはず…ということは容易に察しがつきます。

今後も使い分けはされていくでしょうけれども、「モバイルしか持っていないユーザ(お客さま)」の割合が増加していくことは、念頭に置いておいていただくのが良いでしょうね。
―Googleのモバイルファーストインデックス導入までにEC事業者がまずすべきことは?
大月 茂樹氏:
先ほどの「使い分け」のお話の続きになってしまいますが、なぜ「モバイルで商品選びをして、デスクトップで意思決定をして購入する」というお客さまがいらっしゃるのか?まず、ここに疑問を持たないとダメだと思います。

お客さまがデスクトップで意思決定をしている理由としては、デスクトップであればブラウザで複数の商品ページを開き、タブを横断すれば容易に商品比較ができるからということもあるでしょうけど、最も大きな理由は、デスクトップサイトを見なければ商品に関する詳しい情報がわからないからでしょう。特にECの場合、モバイルサイトに掲載されている商品情報が著しく欠落している、著しく差異があるサイトが多いですね。デスクトップサイトと比較したときに。

こうした差異が生じている理由としてはまず、画面を広く使い様々な情報要素をレイアウトできるデスクトップ向けに長年作り込んで来たサイトを、小さな画面のモバイル向けに落とし込むのが難しいからという理由。また、利用しているモールやASPのシステムでは、デスクトップ向けとモバイル向けとで情報入力欄が個別に設けられていて文字数制限があるなど、仕様上の問題で対応が難しいからという理由などがあるとは思います。しかし、理由はどうあれ、お客さまからしてみればモバイルサイトでは意思決定できないわけですから、EC事業者の皆さんはまずこの差異をなくすこと、できるだけ少なくすることが急務です。

そして、ようやくご質問への回答になりますが(笑)、Googleさんが導入をアナウンスされているモバイルファーストインデックスへの対応としてEC事業者のみなさんにまず取り組んでいただきたいことは、今お話したように「差異をなくすこと」です。まず掲載している商品情報の差異をなくしましょう。特に本店、そして、自然検索流入が重要、当然それからのコンバージョンも多いというショップさんは、急がれた方が良いでしょう。

もちろん、モバイルファーストインデックスが導入されるから…ということではなく、主目的はお客さまの買い物体験を向上させることですから、そこは誤解、勘違いをなされないよう。
―講義にも出てきた「新たな販売チャネルとしてのSNS」の可能性はどのようなものでしょうか?
大月 茂樹氏:
これまで、「実店舗・本店・モール」と大きくは3つの販売チャネルがあったわけですけれども、SNSがそこへ名乗りをあげるような兆候があります。とは言っても、実はTwitterさんもFacebookさんも過去にチャレンジされた経緯があるので、決して新しい話ではないのですが、言ってしまえば残念ながら失敗に終わっているんですよね。ただ、直近では例えばInstagramさんがアプリ内から商品販売できるような仕組みの提供に取り組んでおられ、既に海外では実験的に進められているようです。

Instagram上に店を開き、商品情報を登録して、Instagram上で販売できるようになるのか、あるいは、Instagramのアプリ内でモバイル対応されたECサイトを開くだけなのか。詳しいこと・状況は判断しかねるのですが、単に集客ツール・ブランディングツール・マーケティングツールというような使われ方ではなく、販売チャネルとしての使い方ができるようになる、そんな可能性が出て来ています。「実店舗・本店・モール・SNS」ということになり、EC事業者の皆さんにとっては販売チャネルが増え、ビジネスチャンスが拡大するはずです。
また、従来は基本的に、買い物をするためにお客さまにはわざわざECサイトへ移動してもらわなければなりませんでしたが、SNS内で商品を購入できるようになれば、シームレスな買い物体験をお客さまへ提供できるようになりますよね。

それと、これは「販売チャネル」という話ではなくなってしまいますが…単純に決済のみに限定すればAmazon Payや楽天Payといったサービスを既に導入されているEC事業者さんは多いと思いますが、既に皆さんもご存知の通り、SNSアカウントを利用しての会員登録というものがECサイトでも普及してきています。特にLINE Loginは注目に値するものだと思いますが、こうした仕組み・サービスがシームレスな買い物体験をさらに加速していくでしょうね。EC事業者の皆さんは、この辺りの動向は注視されておいた方が良いでしょう。

―大月先生の考える理想のUI(ユーザインタフェース)とはどのようなものでしょうか?
大月 茂樹氏:
難しい質問ですね(笑)。UIありき…ではなく、「ユーザにとって見やすく・使いやすくあるためには、どうあるべきか?」がまず重要で、ユーザが目的を達成するために最適なUIを考える、UI要素を選択するべきです。いわゆるデザインの原則と言えば良いのでしょうか、ある程度そうしたセオリーには従うとしても、ユーザにとって見やすく・使いやすくあれば、今回の講義でもご紹介したカルーセルですとか、タブですとか、アコーディオン、あるいは、ボタンなどをどのように使っても良いのです。実際、私も普段、ケースバイケースで使い分けたり、使ったり使わなかったりしていますから。

そのページへアクセスしてきたユーザのコンテキストであるとかインテントであるとかはもちろん、デスクトップ向けなのかモバイル向けなのかという区別もしますし、あとは、ユーザのリテラシなんてものも考えますね。そのサイトのターゲットユーザから想定されるリテラシに応じてUI要素を使い分けたり、シグニファイアの確保度合いを変えてみたり。リテラシという言葉は便利なのですが解釈がいろいろとできるために誤解を生むことが多く、あまり使いたい言葉ではないのですが(笑)

少なくとも、「カッコいいからカルーセルを使う」みたいなことは絶対に考えないことですね。やはり、理由が必要です。なぜ、そこでカルーセルを使うのか?なぜ、そこはアコーディオンを使うのか?もっと言えば、そこで使って良いのか?くらいまで考えても良いかもしれませんね。そもそも、理由がないデザインなんて存在しえないですからね。あっ、トップページでのカルーセルの使い方については講義の中でお話した通りなので、騙されたと思って改変、手を加えてみてください(笑)

それで、私の理想なんて大それたことはさておき、皆さんにお伝えしたいこと、意識していただきことはとてもシンプルで、「ユーザ目線、お客さま目線に立つこと」です。ECサイトに限らずですが、未だ多くのサイトがサイトオーナー目線・売り手目線のままです。だからこそ、情報、つまり、お客様にとっての「コンテンツ」が欠落しているし、当然使い勝手も悪いサイトが多いわけです。ユーザ目線、お客さま目線に立って考えられ、構築されたUI。それが理想のUIと言えるのではないでしょうか。
―今回の勉強会、懇親会を終えてのご感想や印象などお聞かせください。
大月 茂樹氏:
2015年2月に次いで、今回2回目の講演機会をいただいたわけですけれども、大阪近辺のEC事業者さんの集まりということで、気質的にみなさんズバズバ来られますし(笑)、活気もありますし、また、会員のみなさんからは積極性や主体性をものすごく感じますね。「相互扶助団体」という名の通り、会員さん同士での情報交換やアドバイスも盛んな印象ですし、今回のような勉強会を企画されている委員の方々もものすごく積極的に活動されていて、私のような講師役への事前・事後のサポートも手厚く、とても気持ちよく講演させてくださいました。

そうした会員さんが集まっている団体だからこそ、団体としての規模も大きくなり、活動を継続して来られているのだろうと。やはり、集まる価値のあるところに人は集まりますよね。みなさんから見れば、私は立場的には受注側の人間ですけれども、こうしてEC事業者の皆さんとお話をさせてもらうとホントに元気ややる気をもらえるんですが、やっぱりEBSさんはすごいなと。

もし、EC運営で困りごとや悩みごとをお持ちなのであれば、一度EBSさんのドアを叩いてみられると良いのでは?と。きっと、灯が見えるようになるはずです。

いやー、今回も勉強になりました…と私が言うのはオカシイですが(笑)、機会があればぜひ、また来させてください。

最後に。ご参加いただいた会員の皆さん、企画・運営に尽力してくださった勉強会委員会のみなさん、ありがとうございました。また、お会いしましょう。
EBS定例会参加表明

イーコマース事業協会ご入会お申し込み